多くの大企業では、社員持ち株会の制度があります。
社員として働きながら自社の株を買うというのは、どういうことなのか。
1分間で考えてみたいと思います。
働いている人は毎月、自分で決めた一定額を積み立て、自社株を購入します。
金額が決められているので株価が高いときには少ない株数、株価が安いときには多い株数を買うことになるわけです。ドル・コスト平均法というもので、株価に関係なく、少額の積立が可能になるのです。
また多くの場合、会社から数パーセントの補助金が出ます。
細かい事務費用や手数料なども、会社が負担してくれるのです。
こんな具合にメリットが説明され、「デメリットはない」などといわれます。
果たして、そうなのでしょうか。
社員として会社の業績や株価に興味を持ち、仕事に対するモチベーションが上がれば、自分にとっても会社にとっても利益です。
「Win-Winの関係」などといわれる状態が期待できます。
でも会社の業績が悪くなったら、あるいは倒産してしまったら……。給料が下がる(出なくなる)うえに、貯蓄として買っていた持ち株の価格が下がって(ゼロになって)しまいます。
では、働いて給料をもらいながら、自分の会社の株をカラ売りするのが正解?
そうかもしれません。
あるいは、ライバル会社の株を買う?
どうせ働くのなら、同僚と仲良く会社とも仲良く、チームとして楽しく働くのがベストだと思いますが、上記のような理屈にも一理あるわけです。
私の新刊本『億を稼ぐトレーダーたち』に登場する渡辺博文氏は、
「働きたくない会社は良い投資対象」
と言っています。
投資対象として良いということは、効率良く利益を出す会社だという判断です。
そういう会社は、社員にとって居心地がいいとはいえない、というわけです。
なるほど、前述した“自社株カラ売り論”とは別の視点で問題を提起していますね。
自社株を持つことが得なのか損なのか──この問いに対する正解はありません。
働いている会社の株を持てば、「働くうえでのモチベーション向上と会社の発展」というプラスの相互作用が期待できるのですが、それを否定する理屈もある、ということなのです。
ただし、考え方を限定すれば答えは出ます。
「利殖のために売買する」ことを前提に相場技術論の立場で考えたら、「自社株を持つな」という結論に達します。
ここでは、働く喜びとかモチベーションとか、そういった要素が排除されています。
自分の手法と値動きの好みで売買対象を選び、たとえ自社株といえども自分決めた売買対象以外にマーケットの価格変動にさらされるものには、かかわらないようにするということです。
ずいぶんと厳しいのですが、こうやって自社株の保有を否定するのが相場技術論の答えです。
林 知之
Vol. 40 社員持ち株会のデメリット
(2011年6月28日)
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