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前編 初心者が気をつけるべき7つの落とし穴

初心者に 寄ってたかって ウソ教え──。
 
金融、資産運用、投資……常識的な社会人がこれほど勘違いしてしまう世界は、ほかにないでしょう。
勘違いは、気づかないから勘違い……錯覚というやっかいなシロモノです。
 
小さな錯覚を抱えた平均的な個人投資家は、いろいろな業者に狙われ、カンタンにころがされます。そして、錯覚を強めて迷路をさまよいます。
 
投資関連情報を発信する業者の多くは、当然のように、投資家の錯覚に周波数を合わせます。「それはちがいます」と説明しても、理解するのに時間がかかる、いや、大部分の人は理解しようとすらしないからです。
 
そうです、キーワードは「錯覚」!
「初心者が気をつけるべき落とし穴」は、常識的な人間ゆえに起きてしまう共通の問題であり、「ベテラン投資家の注意点」でもあるのです。
 

 

前編 初心者が気をつけるべき7つの落とし穴

 

1.夢を追いすぎる

 
経験がなくても、「株価の動きは大きい」と承知しています。
損する可能性も認識していますが、文明人は動物のように“危険を避けることに必死”ではなく楽観的な傾向があるので、「ラクに儲かる」結果を強くイメージします。
 
そして、雑多な情報の中からピカッと光るものを探します。
安易な“正解探し”で、夢を追いかけすぎてしまうのです。
 
ところが、明日の株価は誰も見たことがないのが現実です。
きっと誰かが正解を知っていて、それを知る方法がどこかにある──これが、楽観による大きな錯覚なのです。
 
マーケットを語るプロの言葉に、次のようなものがあります。
 
「秘密がないのが、株式市場最大の秘密なんだ」
 
夢も希望もない、ワクワクしない、心地よくない……楽観的な心は、このようなスルドイ意見を受け入れません。
 
ウハウハに儲かる姿をイメージするのは、とても自然なことです。楽観傾向のある、あたなの心の状態と一致します。
 
でも、それを競争の中で実現するためには、相手(株式市場)を知らなければなりません。どんな場所なのか、なにが起きているのかを、可能な限り正確に認識する必要があるのです。
 
初心者が気をつけるべき7つの落とし穴“その1”は、「実現不能な夢を追ってしまう」ことです。
 
プロを含めた不特定多数の投資家と、同じ土俵で勝負するのですから、落ち着いて「真実」を知ろうとしなければなりません。
 

 

2.相手を知らずにスタートする

 
「ワークマン」という、作業着の販売店をご存じでしょうか。
機能性を重視した作業着を長年にわたって作ってきたノウハウを使い、安くてオシャレなスポーツウエアやタウンユースの服を売り出して人気を集め、株価は大きく上がりました。
 
こういった変化を、早い段階で察知したプロもいます。
誰でも見ることのできる街中の風景なので、「この会社は伸びるのではないか」と感じた一般投資家もいたことでしょう。
 
このような例を挙げて、「身近な企業に投資しよう」とか「日常生活で気づく儲けの大ヒントもある」などと説く向きもあります。例えば・・・「いつも買い物をする店で新しい売れ筋商品を見つけた、確認すると上場している会社の製品だったなら、その直感で株を買えばいい」とか……。
 
その情報そのものがキケンです。その理由は、2つあります。
 
まず、極めて多数の専門家が、同じことを考えて「株価変動を事前に察知しようと頑張っている事実が重要です。スーパーや百貨店を観察している一般人が、上場企業の業績を大きく変化させる事象に気づくかどうか……はなはだ疑問です。
 
次に、株価の変動は必ずしも企業の内容と一致しないという現実にも目を向けなければなりません。代表的かつ人気のある株価指標のひとつ株価収益率(PER)は「15倍くらいが適正」などと説明されるのですが、東証一部に上場する約2,100銘柄のうち最高(割高)が2,712.82倍、最低(割安)が)2.04倍と、ビックリするほどの開きがあるのです。
 
「身近な企業……」の説明として、「消費者として製品に触れていると、その企業の変化を察知できる」なんてものもありますが、当然のように論外! 運用会社や調査会社が、専業主婦をスカウトしたなんて話は聞いたことがありません。
 
各種の調査に仕事として携わるプロならば、株価の変化を察知するケースもあるでしょう。しかし、一般的な個人投資家が同じ方法で正面から挑んだって勝てるわけがありません。
 
初心者が気をつけるべき7つの落とし穴“その2”は、その1と重なることですが、株式市場での出来事を知ろうとせず、断片的な情報だけを頼りにスタートしてしまう」ことです。
 
通常の職業(本業)をもつ“兼業投資家”として「どんなチャンスがあるのか」をさぐる姿勢で、じっくりとマーケットを観察する準備期間が必要です。
 

 

 

3.「プロ」の認識が誤っている

 
最初の2項で、次のような“落とし穴”を紹介しました。
 
「夢を追ってしまう」(第1項)
「相手を知らずにスタートする」(第2項)
 
これら土台となる方向ちがいによって、株式投資に関する「情報」について、致命的な錯覚が起こります。「株式投資のプロ」とは、どんな人なのかという問題です。
 
地上波のテレビ番組など“メジャー”な場所で株式市場を解説している人は本当に、いわゆる「売った買った」の実践方法を知っている人物なのだろうか──こういったことを、今までの人生経験と知恵を活用して、きちんと考えてみなければなりません。
 
例えば大手メディアの経済記者が、株式市場について詳しい記事を書いていますが、立場的に企業の重要な内部情報(株価に影響を与えるもの)を知るチャンスもあるので、自己資金による売買を厳しく制限されています。
 
すると、実際に株を売買して利益を出すために、そういった記事を読んでいる個人投資家は、「泳ぐことのない人から、荒海での泳ぎ方を教わっている」状態です。これは悲劇です・・・
 
「株式投資に必要なのは情報だ」とばかり、誰も明日の株価さえわからないのに、すぐに入手できる情報を無防備に受け入れて大切な資産を投じるなんて、オトナの行為ではありません。錯覚とは、本当にオソロシイものです。
 
金融機関の営業担当や、相談窓口の人もそうです。
彼らのほとんどはセールス担当者、否定的なニュアンスを入れて表現すれば、単なる“売り子”です。
 
例えば「写真をはじめよう!」と思い、家電量販店に高級なカメラを買いに行ったとします。売り場の店員自身が写真の技術やこだわりをもっていて、それを真摯に伝えてくれると信じますか?
 
ゴルフ場の従業員は全員、ゴルフの上級者でしょうか?
 
詳しいことを知らない人間は、情報弱者の立場にいます。
日々、仕事として情報を発信している人の立場と意図を考えて、わからないなかで情報の質を見極めなければなりません。
 
初心者が気をつけるべき7つの落とし穴“その3”は、「世間でプロとされる人たちの言葉に、安易に耳を傾ける」ことです。
 
ひねくれではなく、オトナとして真実にたどり着くために必要な、情報のフィルターをつくりましょう。
 

 

4.ゴール設定をする

 
さて、ここからは、“落とし穴”を紹介しながら、具体的な取り組み方を考えていきます。
 
まずは、ゴール設定です。
前項で「カメラをはじめる」なんて例を出しましたが、本気でプロを目指すのか、仕事にはしないけど腕前はプロ級になりたいのか、そこそこの趣味として楽しみたいのか、日常のスナップ写真が少し上手になればいいのか……なにを目指すのか、どんな立場になるのかを決めるのが当然です。
 
ゴールは、やっているうちに変化してもいいのですが、とりあえず決めないとスタートできません。
 
株式投資ならば、例えば次のような分け方でしょうか。
 
 
・株式市場に参加してみる程度
・金額を決めてバクチ的な売買を楽しむ
・じっくりと資産運用する
・生活費を稼ぐプロを目指す
 
 
実際の売買では、バタバタと上げ下げする株価を見ているうちに、「儲けを逃すのがイヤだから、なんとなく」という感情だけで株を買ってしまうことがあり、その後の対応に迷って失敗します。
 
こういった個々の決断について、「株を買う理由は明確にしろ」といった戒めも重要ですが、そもそも、基本的なゴール設定が不可欠です。それをベースに、「では、どんなやり方をするか」という具体的な作戦を整えるのです。
 
初心者が気をつけるべき7つの落とし穴“その4”は、「プラン不足で実践に臨んでしまう」ことです。
 
自分の立場、自分のゴール、自分なりのやり方──今日明日の利益ではなく、5年後、10年後の状況を想像してプランを練りましょう。
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